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四谷見附の科学少年

昭和38年のある日、東京四谷に暮らす大学生が、自宅屋上に自作の通信アンテナ・タワーを完成した。
設計はもちろん、鋼材の溶接まで自分でやってのけたというから、すでに玄人はだしの技術力を持っていたということができる。

時はさらに15年の歳月をさかのぼる。
当時は、どこにでもいる普通の子供であった。
男の子なら誰でも興味をおこす船、機関車、自動車、飛行機などの機械に夢中になった。ただ、ちょっと他の子供とちがって、動く仕組みそのものに強い興味をひかれたのである。何しろ幼稚園時代には、早くも迎賓館前や絵画館前でエンジン付きのUコン模型飛行機や船を動かしていたほどである。
このとき手ほどきをしてくれたのは、近所の模型屋店主。よほど気にいられたのか、部品から燃料まですべてを無料で提供してくれるなど、少年にとっては、おおいに夢がふくらむ環境の中で時をすごしていたのである。

やがて小学校に入学、2年にあがるとこんどは鉱石ラジオが流行しはじめる。飛行機や船に夢中だった少年は、ここで電波にもその興味を広げてゆく。
こちらの手ほどき役は、町内の電気店主だった。

四谷の航空少年は、ここで電波・航空少年へと、一段のバージョンアップを遂げることになった。


自作機械でアマチュア無線へ
この少年、実は冒頭に述べたアンテナ・タワーの大学生が幼かった頃の姿である。そして電波・航空青年へと成長してゆくのである。
鉱石ラジオの次はアマチュア無線へと発展し、少年は小学校4年で最初の電波を発信する。
さらに高校生になったときには、世界各国との交信や、TVの映像電波まで出せる水準に達していた。それも、ただ機械を操作するだけでなく、必要なものはすべて自作していたというのだ。とにかく完成品の機械には全く興味が湧かず、秋葉原電気街に通って部品を集め、何でも作ってしまうところに、科学少年の心意気が感じられる。


LUSO設立へ

大学生となった科学少年が、アンテナ・タワーを完成して4年後の昭和42年秋、通信機器メーカーとしてのルソーを創立した。
社名の由来は、哲学的な考え方で仕事を、という思いがこめられたもの。
哲学者、ルソーの名から、つづりを変えて取ったものだ。
おりしも「エコノミックアニマル」という言葉が流行した時代、「不要なものでも、売れるものならどんどん作って売ってしまえ」といった風潮が巷にはあふれていた。が、それに反対する姿勢がこの社名には打ち出されているのである。
そうした中から生まれてきたのが「人真似ではない独創的感性で製品を生み出す」いとうスタンスだ。それが現在のLUSOへとつながっているのはいうまでもない。



宇宙開発技術まで導入した新製品の開発

そのLUSOは、後にゴルフ空間を快適化するスーパーネットを開発する。
いつの時代でも、より高性能な製品を生み出す為の新技術開発にも余念がない。
スーパーネットの機能・性能を考えれば納得もゆくはずだ。なにしろ、その高さは、地上50メートルにもおよぶし、突風、台風、地震、雷などの厳しい自然条件にもさらされ続けなければならない。ことにネットが風をはらんだときなど、タワーには膨大な力がかかる。それにどう耐えるか、また厳しい条件下でどこまで機能を保てるか、はネットタワーにとって重要なファクターである。
ここでLUSOが開発した「三角トラス構造とZ型トラスの組み合わせ」というものがある。
スーパーネットのタワーが細身ながら他を圧する強度と剛性を実現している理由もここにあるのだが、これはタワー内部であらゆるエネルギーを吸収してしまう構造。一基一基の独立性も高いので支柱を建てたりピッチを狭くしてタワー同士で支えあう必要もなく、開放感のあるゴルフ空間づくりにも結びついている。
中でも特に威力を発揮したのが、NASAがアポロ計画推進のために開発した「有限要素法による非線形解析」という技術。ゴルフ用ネットタワーという身近な構造物でありながら、使われたテクノロジーは宇宙的なものだ。飛行機やヘリコプターさえ造れるほどの技術力があって、はじめて可能になった高機能なのだ。




更なる技術進化


こうした技術力を磨いてきたのは、豊富な経験と知識、そして数多く繰り返してきた実験の成果である。
LUSOは、次のステップに向けての開発も怠りなく続けられている。
こうした新製品開発の原動力となっているのが、LUSOの社是である「生み出すのは独創の新製品。他人の真似はあり得ない!」という精神だ。
それは、模型飛行機やアマチュア無線に夢中だった科学少年の夢から生まれた心だ。
クランクアップタワー・スーパーネット、そして次の新製品も、すべてここから生み出されてくるのである。